『二回目の』
仕事終わりの寒い夜。
感覚がない指先に白い息を吹きかけながら、歩を進めた。
「あれ? 久々だな~仕事帰り?」
寒い夜に似合わない声とともに現れたのは、人生で一番会いたくないヤツだった。
心の奥底に閉じ込めていた初恋の記憶が、うずき始める。
「ああ、久しぶり……ちょっと残業やばくてさ。お前こそ、こんな時間にどうしたんだよ」
お互い社会人になって、もう会うことはないと思っていた。
だから、自分が自分じゃなくなるような、ぐちゃぐちゃしたあの感情を思い出すこともないと油断していた。
「さっきまで会社のヤツと飲んでたんだよ。そいつべろんべろんになっちまったから、タクシーにぶちこんできたとこ」
俺の知らないヤツと二人で仲良く飲んでたのか……いや、そんなこと俺には関係ない。
「てかお前、手ぇ真っ赤じゃん! ちょっと貸せよ」
俺よりも少しだけ大きな手が、宝物をぎゅっと大事に抱きしめるように、赤く震える指先を包み込んだ。
「どうだ、あったけえだろ」
指先の感覚がじんわりとほぐれていく。
蘇りつつある触覚が、お前が俺に触れているという事実を突きつける。
振り払うことなんて、簡単にできるのに。
「ってお前、顔も真っ赤になってるぞ。オレの手、熱すぎるのかな」
これは、初恋が再燃した、なんてもんじゃない。
俺は性懲りもなく、また、この男のことを——。
あとがき
学生時代の恋愛と、大人になってからの恋愛は、似て非なるものっていう感じがしませんか?
お読みいただきありがとうございました!

